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歯周病とは
歯は体の中と外を貫通する特殊な臓器であると言えます。
一方はアゴの骨に埋まり、一方は口の中に出ています。
この大事な貫通部分としてのつなぎ目(コネクター)の役割を果たしている歯根や歯根膜、歯肉、そして歯槽骨といったコネクター部分をいわゆる歯周組織と言い、この部分が破壊される病気を歯周病と言います。
多くの場合、歯と歯肉の境目や歯周ポケットに溜まったプラークや歯石に潜む歯周病菌と、その毒素が原因となります。またある部分の歯が弱くなったことで、バランスが崩れ、それまで耐えてきた通常の噛み合わせや噛む力によってもさらにダメージが加速するケースもあります。
このようにつなぎ目部分が破壊されれば、直接歯の存続に関わりますから、虫歯と並んで最も注意しなければならない疾患です。 -
歯周治療とは
歯とは歯根を通して体の中と外を貫通している特殊な臓器だと述べました。
他に爪や髪の毛も体の中と外を貫通していますが、決定的に違うのは爪や髪は神経が無く切っても痛みを感じませんし、また生えてきます。
しかし歯は痛みを感じ、永久歯を抜いたら二度と生えてきません。
それだけ再生が難しい複雑な構造をしているためです。私達、歯科医療従事者は歯を残すように訓練され、様々な治療法の選択肢を持っています。
保険診療においても自費治療においても健全な歯周組織が無ければ他の治療が成り立ちません。
歯周組織破壊の進行を止め、安定に保ち、場合によって歯周組織再生治療によって、本来の自分の歯を保存する役目を持ちます。しっかりと歯周治療を受け、定期的検診をしている人の歯の平均喪失率は10年に1本と言われていますが、歯周治療も定期検診も受けない人の歯の喪失率は10年に6本と言われています。
皆さんはどちらを選びますか? -
歯周病の全身への影響と
クリーニングPC(プラークコントロール、プロフェッショナルクリーニングの略称)は様々な疾患の原因となりうる歯周病菌などの原因物質を物理的に、そして大幅に減らす一助となります。
始めは、うすいプラーク(歯垢)が付着する程度ですが、その状態でクリーニング出来なければ、それらプラークに類似細菌が寄ってきて大きな集団となり、さらにそれらの産生物質でバイオフィルムという、強固なばい菌のバリアが出来てしまいます。
そうなると抗菌剤ですらも無効になり、全身に悪影響を与える産生物質を止めづらくなります。
シンクやふろ場を放っておくと出来てしまう膜のようなヌメリに似ています。一方で唾液の中のカルシウムの沈着でプラークは次第に歯石へと変化し、強固に歯の根元付近に固着します。
ここまでくると、いくら歯ブラシをしても落とすことは不可能です。
歯科医院での専門的な除去が必要になってきます。このような予防や初期治療は痛くないどころかお口の中がすっきりさっぱりして気持ちのいいものです。
当院では歯石に加え、強固な歯の着色成分までを一気に落とすエアフローという専門のパウダー成分の洗浄を行っていますので、隅々まできれいにできます。近年の報告では、「20才ですでに半数以上に歯石の沈着と、4㎜以上の病的歯周ポケットが観察される。」「日本人の成人は程度の差こそあれ、8割の人が歯周病に罹患している。」と言われています。
放置すれば進行します。特に歯周病菌は歯肉の毛細血管や気道などを介し容易に全身に広がります。
脳や心臓、腎臓などの血栓や動脈硬化を始め、糖尿病、肺炎、骨粗しょう症、早産、認知症、などの原因のひとつであると示唆する報告が多数あり、全身への悪影響が懸念されています。各個人の口腔内は、それぞれ全員違います。歯の状態、唾液の性状、噛み合わせや、噛み癖も個人の環境や加齢、全身的基礎疾患、生活習慣、精神状態によって様々に経年的に常に変化していきます。
全身的に高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、などの各種内臓疾患、自己免疫疾患、など基礎疾患をお持ちの方、また局所的に歯ぎしりや顎関節症、その他かみ合わせに問題をお持ちの方は健康な歯を維持するのに特に注意が必要になります。 -
軽度~中等度の歯周治療
専門的な器具を用い、歯周ポケットの表面から順次深いところまで、歯垢、歯石、侵された歯根表面、または炎症でグズグズになった歯肉の除去、洗浄(クリーニング)を行います。 いわば徹底した除菌です。
クリーニングしているだけなのにほとんどの場合歯肉から出血します。これは慢性的に炎症を起こし歯肉が鬱血しているためです。次第に健康な歯肉へと引き締まっていきます。 -
重度の歯周治療と再生医療
重度のレベルまで悪化しますと、ポケットが深く通常のクリーニングでは汚れを取りきれません。外科的に直視下で徹底的に汚れをとります。また近年では歯周組織再生医療も盛んになってきております。
5年間のデータ結果では保存困難な歯に対して、インプラント治療と歯周組織再生医療はほぼ同等の良好な結果が出ています。抜歯になる前の治療の選択肢として推奨できる治療法です。※現在2種類の材料が歯周再生医療に用いられています。不適応なケースもありますので、詳しくはスタッフまたは担当医とご相談ください。